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星座のような、ひとまとまりの小説集‐上林暁傑作小説集『星を撒いた街』

ただ作品を寄せ集めた小説集なのではなく、編集・構成によって一つ一つの作品が新たに星座のように繋がって統合され、一つの大きな全体としての作品像を映し出す。そのような不思議なおもしろさがある一冊です。

上林暁傑作小説集『星を撒いた街』上林暁傑作小説集『星を撒いた街』
(2011/07/04)
上林暁

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「上林暁傑作小説集」とあるとおり、本書は上林暁という小説家の作品の中から7点をピックアップして編集・構成された小説集。

といっても本書を読むまでは上林暁という小説家を知らなかったし作品も読んだことはありません。 なのになぜ本書を手に取ったかって、それはもはや自分の中では鉄板の出版社・夏葉社さんが手掛けた本だから、というただそれだけの理由。夏葉社さんのピックアップする日本文学作品には、不思議とどこか運命的なものが感じられるんです。自分にとって全く未知の作品なのに、読後には必然的に読むべくして読んだのだと思わせられる何かがある。それこそ筆者や編集者など、その作品が自分のところにやってくるまでにかかわった全ての人との一体感がのようなものが感じられてしまうんです。で、やっぱり本書『星を撒いた街』にもそれがありました。

人間はほんの一握りの人間を除いて、各々の生活の中でだれしもが苦悩を抱え、葛藤する存在です。本書に登場する筆者の実妹や妻、そして筆者本人のように、生活に困窮していたり、病を抱えていたり、自分の身の上にやり場のない忸怩たる思い持っていたりします。

そんな人間各々にとって、固有の何かとても大切な営みに勤しむこと、それは大袈裟に言えば生きる希望の光です。自らを全面的に託しているような何かに親しむことで精神の再生が図られ、生活に躍動感が生まれ、アイデンティティが保たれる。筆者の実妹にとっての畑仕事。妻にとってのギターと歌。そして筆者にとっての月見草。傍から見れば何とも思えないようなちょっとした営みの中に、人は生命の輝きを見いだす。だからこそ、そうした営みを失ったり奪われたりするとき、計り知れない喪失感に襲われるのです。

筆者自身の感情のゆらぎと起伏、大切なものを失った時の喪失感、あるいは筆者から見た他者の苦悩する姿、そして人間が一筋の光を得て活き活きと蘇っていく生命の喜悦感…。そのような人間のおかしさと尊さが筆者の素直でいながら味わい深い文章によって、読み手に沁み込んで来るように迫ってきます。

そして何と言っても圧巻は本書のラストを飾るタイトル作品『星を撒いた街』。高台から見下ろす眼下に広がる夜の街に灯る無数の明りのもとに、読み手は2つとない無数の人々の苦悩と喜悦の営みを見るのです。そして全ての営みそれ自体が美しき生命の輝きへと昇華する。これには胸を打たれないわけにはいかないでしょう。

いくら貧乏でも汚くても、心までは汚くなりゃしないさ。むしろ無邪気できれいだよ。つまり灯りは心の表現だね。

一つ一つの作品自体の味わい深さもさることながら、編集・構成によってそれらが新たなひとまとまりの作品・物語として自分の中に構築されていく。やっぱり不思議な一体感を感じずにはいられない一冊でした。

ちなみに夏葉社さんより上林暁さんの新刊『故郷の本箱』という作品が出版されるようです。こちらも楽しみ~!

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見えなくてもそこにある-『さよならのあとで』ヘンリー・スコット・ホランド

本はひとつの人生で、人生は一冊の本-『レンブラントの帽子』バーナード・マラマッド

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