ちょっと前に佐藤可士和さんの『デザインペディア』という本を読んだ
感想 を書いたんですが、この本の中でレコジャケのデザインについての見解が述べられていて非常に面白かったんですね。
私自身もレコードのジャケットってCDに比べて大きいので迫力があって、かつ紙に直接印刷されていることもあってなんだか味があるので、レコジャケを眺めるのがすごく好きなんですよね。なのでポスター代わりというわけではないんですが好きなジャケットのレコードを飾るためだけに買ったりもしてました。
そんなことで『デザインペディア』を読んで、自分なりにも自分の好きなレコジャケに、なんで惹かれたのかっていうのを考えてみるのはおもしろいんじゃないかと思い立ってこのエントリーなわけです。
好きなジャケットは色々あるのですが、あえてその中で3枚のみ選んでその魅力について考えてみました。
①『LONDON CALLING』THE CLASH
このアルバムはTHE CLASHというセックスピストルズと双璧をなすパンクバンドの79年の名盤『LONDON CALLING』です。
このジャケット、数あるレコジャケの中でも私が一番好きなジャケットです。
中央で今にもベースを床に叩きつけ破壊せんとするパンクスはクラッシュのべーシスト、ポール・シムノンです。良くボーカルのジョーと勘違いされるみたいですが正確にはポールだそうです。
この、楽器を叩きつけて破壊するという行為は、「終わり」っていうことを象徴していて、この今にもベースをぶち壊そうとする瞬間を切り取ったこのジャケットこそ、やれ旧来の労働者階級を破壊せんとするPUNKのメッセージだとか、まぁいろいろと御託を並べたいとこなんですが、、、そんなのもう関係ないっしょ、と思えるぐらい、緊迫した空気がそのまま固まってしまったような瞬間を切り取った圧倒的なパワーを感じるんです。
それでいて「LONDON CALLING」のロゴは丸みのある書体で、カラーも明るいピンクとグリーンを使ってPOPな印象もあり、クラッシュの音の幅広さやPOPさを連想させ、このあたりはピストルズのアートワークとも重なる部分ですね。
個人的には、この叩きつける瞬間のシムノンの「うつむき」具合に、「永遠の自己探求」のようなものを連想せずにはいられないんです。まぁここまでくると絶対私の想像にすぎないんですが、自分の初期衝動と真摯に向き合うような、ある意味生真面目さみたいなものをこのうつむきから感じるわけです。パンクスって暴力なんて言うイメージもあるけど、ただ暴れてるんじゃなくて自分がなぜ現状に不満を抱いているのか、自分はどうなりたいのか、っていう、そういうものと真摯に向き合った上での怒りなんだよ、というような。
クラッシュの特徴でもあった反骨精神、男臭さと、人間臭い生真面目さみたいなものが凝縮されたジャケットデザインではないでしょうか。
ちなみに個人的な想像ですが、後の90年代PUNKの名盤、RANCIDの『...And Out Come the Wolves』や80年代のハードコアバンドMINOR THREATのこれまた名盤『MINOR THREAT』のジャケにもなんとなくこの「PUNXのうつむき」というものが何かを感じさせるデザインになっていて共通点を感じたりしています。もしかしてこれらは『LONDON CALLING』にインスパイアされてるんじゃなかろうかという妄想を勝手にどんどんふくらましてしまうわけなんですね…。
『MINOR THREAT』MINOR THREAT↓
ちなみに上記のランシドはボーカルのティムが運営しているHELCAT Recordsというレーベルからはクラッシュのボーカル、ジョーがソロでアルバムをリリースしていますし、ランシド全員クラッシュへのリスペクトを公言してはばからないですし、信憑性は高そう………ってこともないか。。。
②『Rage Against The Machine』Rage Against The Machine
はい、穏やかでないですねこのジャケ。なんだか心がざわつきますね…。
Rage Against The Machineという、このバンドは、『Machine(マシーン』=「アメリカ政府」「体制」、『レイジ(レイジ)』=「怒る」、『Against(アゲインスト)』=「反抗する」というその名のとおり反体制の社会的、政治的メッセージを発し続けるミクスチャーロックバンドです。
はっきりいって反体制なんてそんな生易しいものでなく、これまでもホワイトハウス前でゲリラライブを行って逮捕寸前までいったり、9.11直後、このバンドの曲が全てラジオで放送禁止になったりと完全に政府からひとつの左翼団体のような位置づけとしてみられている半端じゃない姿勢を持ったバンドです。
サウンド・スタイルはハンマーのような重々しさとジャックナイフのようなソリッドさを併せ持つ超ド級のハードコア。機関銃のようにたたみかけるラップで怒りを込めたメッセージを究極なまでに最大限詰め込んだスタイル。これは音楽的要素うんぬんでなく、彼らは怒りを表現し、相手に叩きつける最も効果的な方法としてこのスタイルを選んでいるのです。
そんな彼らの1stアルバムはセルフタイトルの付いた『Rage Against The Machine』。このジャケはアメリカ政府傀儡の南ベトナム政権による仏教徒差別に反対するため1963年に焼身自殺した僧侶ティック・クアン・ドックの写真が使われているんです。今まさに焼身自殺せんとする瞬間を切り取ったこの白黒の写真と乱暴にプリントされた「Rage Against The Machine」の文字のみの構成。
自殺の瞬間をジャケットにするなんて、衝撃的過ぎて、まったくもって穏やかでないんですけども、ここから人間の尊厳を抑圧しようとする機関に対する、彼らの皮肉を飛び越えてしまった皮肉とも言うべき貫徹する強烈なメッセージを感じないわけにはいかないでしょう。。
デザイン的にこれどうなの?ってことになっちゃうと思うんですけど、つまり言いたいのは、このバンドの表現そのもの全てが反体制のメッセージとしてのツールであり、レコジャケすらもそのメッセージを伝えるためのメディアとしてのインパクトを最優先しているってことなんです。つまりこのバンドのコンセプトともいえる「怒り」という本質をインパクトと共に首尾一貫してここでも表現しているということなんですね。
まぁコレ、絶対に部屋には飾りたくないですが……。
ただ、この彼らの姿勢に、レイジというバンドのバキバキにぶっとくて、どんだけ圧力を加えてもぜったいに折れることのない強固な軸みたいなものを感じずにはいられないわけで、この感覚こそデザインそのものでないかと思うわけです。
③『Die, Die My Darling』Misfits
Misfitsというこのバンドは、なんとセックスピストルズが出てきた1977年に結成されたバンドで、
こちら のエントリーでもちらっとご紹介したことがあるんですが、ホラーパンクと言われる、パンクなサウンドながらもB級ゴスチックな雰囲気を醸し出しつつ最高にPOPで最高キャッチーで最高にシンガロングな音を鳴らすバンドです。
ビジュアルも、メンバー全員が日本のビジュアル系や聖鬼魔Ⅱのようなメイクと、フロントに長く垂れ下がる髪が印象的で、それでいて全員マッチョというバランス感覚に優れているのかそれともアンバランスなのかもよくわからなくなるほど絶妙な「ホラーパンク」をそのまま体現している印象を与えてくれるナリをしています。PVも
これ とかおもしろいです。前フリ長いですが。
メンバーは変わってはいますが、現在まで30年以上にわたって活動を続け、多くのバンドからもリスペクトされてやまないバンドです。メタリカに
カバー されたこともありますし、レッチリの『Dani California』のPVでもパロディとして登場しています。
そんな彼らのジャケットは毎回ガイコツなどをあしらったいかにもホラーチックなジャケなんですけども、その中でも目を引くのがこの『Die, Die My Darling』の7インチのジャケ。
黒と白とロゴのパープルだけの単純な色づかいに、綺麗な女性にグラスをかざすと、そこにはドクロが写っているという構成。それをいかにもB級チックなタッチで表していて、このコテコテ具合に目をひかれるわけです。
それでいて、よくみるとグラスを持っている自分も手も骨で、おまえも周りの人間も、すべての人間は表面をどれだけ取り繕うと、中身はみんな所詮ガイコツで変わらないものなんだぜ、という皮肉と、逆に平等な存在であるというメッセージだったり、綺麗な女性ほど怖い存在だぜ、っていう暗黙のメッセージだったり、そんなものを感じてしまう、シンプルだけども味わい深いデザインだな~と思わずにはいられないジャケットなわけです。
シンプルでいて深い、これって素晴らしいことだと思います。
こんな具合に音も伝えたいメッセージも、全てが30センチ四方のキャンバスに凝縮されているレコジャケのデザインって、なんかすごく良いですよね~。。。
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